『ルナシー』(05年・チェコ)

ご来場の皆様 ご覧に入れます映画はホラーです。 ホラーというジャンルならではの落胆を皆様にお届けします。 これは芸術ではありません。芸術はとっくに死にました。
毎晩のように男二人に拘束着を着けられそうになる悪夢に悩む主人公が、時代錯誤な侯爵と名乗る男に言われるがままに家へと招待される。その日の夜、神を冒涜し、サディズムに浸る侯爵を目撃する。侯爵は自らを硬直症持ちと言い、精神を病む同じような境遇の主人公にとある精神病院に案内する。そこでは精神病患者に拘束着も体罰もない「自由意思療法」をとるおかしな病院だった。 久々!映画感想。 なんだか今年は忙しいよ。映画を観始めて以来、一番映画を観ていない年だと思う。 チェコが生んだ鬼才中の鬼才ヤン・シュヴァンクマイエル監督の最新作『LUNACY』(間欠性精神病、精神病、狂気)。タイトルは『狂気』で舞台は精神病院と聞いただけで毒々しさを感じさせる。怖いもの観たさのグロテスクで奇妙奇天烈な非合理映画かと思ったらちゃんとしたストーリーはあるし、現代社会への風刺が効いた作品だと思う。監督自身「この映画はホラーです。」と位置づけているが狂気じみてるのはこの映画だろうか?現実の方がホラーなのだよと言わんばかり。 相変わらずグロいが今までになくユーモアが少ない。不快な効果音は多用している。小物では生肉、舌、釘、金槌、椅子、クローゼット、クッション、ニワトリ、カード、鍵、櫛、棺桶など。 「芸術ではありません」というように、セリフが多くて、論理的で哲学的な要素がある。また登場人物たちがとても胡散臭い。主人公はもちろん観客の視線になった立場なんだろうけど、観客が物語りに従うように無垢な主人公が相手に言いように利用されてしまう。管理される残酷さ、自由だけど残酷な現代を風刺しているのではないかと思った。 自由はどこかで管理されている。ホラー観たさで現実を見ることができるだろうか。