『ビバリウム』19年・ベルギー・デンマーク・アイルランド

「お子様は?」「まだです。」

 

原題『VIVARIUM』

物語

夢のマイホームを夢見るカップルは、とある不動産屋に理想の生活を提供すると謳う住宅街へと案内される。薄気味悪い不動産屋は案内を終えるといつの間にかどこかへ消え失せ、カップルはその場から帰ろうとするが規則正しく並ぶ住宅街から出られなくなる。カップルは何とかその住宅街から脱出しようとするが、同じ家にたどり着いてしまう。赤ん坊が段ボールで届けられたり、不可解なことが日に日に起こるようになる。

 

規則正しく管理された無機質な住宅街の中に取り残されたカップルの脱出劇と精神崩壊を描いているが、結末は御愉しみに取った方がよいと思う。サイコスリラーと言っていいのか明るいホラー。ストーリーは不条理で世にも奇妙な物語。暗闇や気持ち悪い描写は皆無だが精神をジワジワむしばむ。お化け屋敷とループ物を足した作品。怖いもの観たさに見るのはよいが、嫌いな人は途中で辞めちゃうくらい気持ち悪い。R15指定。

映画を観ていて思ったのがシュールレアリズムのマグリットの画を思い出す。シンプルな構図に何か意味を成すような物一つ。シンプル過ぎる世界にどこか不気味さを感じる。奇麗すぎる世界は替えって不気味なのだ。皮肉めいたものを感じる。

青空には雲らしい雲が規則正しく浮かんで奇麗なのだが、その青空にもどこか不気味さを感じる。無機質すぎるワントーンの色彩、統一感ある住宅街にもどこか不気味さを感じる。衣食住の不自由のない生活は赤ん坊を育てること以外に自由はない。赤ん坊の成長と食事の準備以外に自由のないカップルの運命や如何に。