『長江哀歌』(06年・中国)

二千年の街が二年で消える。解決には時間がかかる。
監督・脚本:ジャ・ジャンクー(賈 樟柯) 【ストーリー】 大河・長江の景勝の地、三峡。 舞台はそのほとり、二千年の歴史を持ちながら、ダム建設によって伝統や文化も、記憶や時間も水没していく運命にある古都。16年前に別れた妻子に再会するため、山西省からやってきた炭鉱夫サンミンと、2年間音信不通の夫を探すシェン・ホンの2人を軸に描かれる。時代のうねりに翻弄されながらも日々を精一杯に生きる人々の「生」の物語。 1970年生まれの若手ながら世界的にも知られるジャ・ジャンクー監督。本作で06年ヴェネチア映画金獅子賞受賞。 http://www.bitters.co.jp/jia/index.html TSUTAYAでパッと手に取った作品が実は06年ヴェネチア映画祭関連だったのは偶然のこと。映画は世界の地理や文化を学ぶいい教材というのは間違いない。中国の発展の中で、犠牲となる一般市民を淡々と描かれる。あざとい演出も突拍子もない出来事もないが、(ウソウソ、UFOやロケットのシーンがあった。)景勝地の風景も不似合いな建物と取り壊し工事現場の風景ばかりで、なくなりつつある街を映し出している。立ち退きに応じない住民にヤクザが合法的に使われていたり、胡散臭い手品を少し見せては金を取ったり、知らない土地を知る主人公2人はこの映画を観る観客の視線そのもの。 監督の過去の作品で『青の稲妻』(02年)を専門学校で観たことがある。内陸部の田舎街で暮らす若者たちのやり場のない青春を描いていた。僕も地方出身の為に好感を持って観ていた。 このどうしようもない空気。観ていて痛感する。 そう。田舎はどうしようもないのだ。都会の流行も、国内の重要な事もその土地からみればいまいち実感がわかない。ただ他の土地に憧れを抱いていることもあるのだが、理由もなく生まれ育った場所というのは重要な所とどうしても忘れられない。そんな視線を持っているのは素晴らしいことだ。 『男たちの挽歌』(86年・香港)のチョウ・ユンファに憧れる青年がカッコつけてタバコを紙切れに火をつけて吸う場面がある。20年も前の映画なのに青年は当時の香港に憧れている。20年後の三峡のボロアパートに。 ペットボトルを離さないシェン・ホンが水を飲むシーンが幾度も出てくる。テーマに意味深で、自然に艶めかしいなと思って観ていた。時々歌を歌う人、人が踊るシーンが出てくるのは監督の演出だろう。 撮影はどうやらビデオのようだ。用は映画を撮る媒体はなんでもいいのだ。