ヤン・シュヴァンクマイエル!『ドン・ファン』その他の短編

去年の同じ頃、「『シャバウォッキー』その他の短編」を購入しているんだよな。

実に一年ぶりにヤン・シュヴァンクマイエルの作品を見る。実~にマニアック!(笑

でも日本には、そのシュヴァンクマイエルのファンっていう人が結構いるんだ。
シュールでグロテスクで不思議な世界観っていうのがアーティスティックで、魅力ある。じつに変質的なものも感じるけど、誰しも人形で遊んだことがあるし、こういうことを考えたというのもあるんだ。奇妙奇天烈なアニメーションの世界。あんたの感性すごいよ。

このDVDには6作品の短編が収録されてあって、まず一つ一つ解説と感想を書いてみる。解説はDVD裏面を参考。

『棺の家』(66年/10分)カラー
解説:一匹のモルモットを飼っている道化の家に、そのモルモットを売ってほしいという道化が現れた。売りたくない主人はその道化を木槌で殴り殺して棺に入れようとするが、間一髪で逃げられてしまう。今度は狙われる番となる主人なのだが…。演じるのは指人形。

感想:指人形で遊んだことを思い出したが、実際に両方の手に人形を入れて操ると、自然と喧嘩をするような感じになっていたような気がする。実際に、こういった争いも指人形で現されたら他愛もないような気がする。

『コストニツェ』(70年/11分)モノクロ
解説:15世紀の頃から数万人もの人骨を収集し、奇妙な人骨のオブジェを多数仕上げた、オルーリクのシュワルツェンベルグ公爵によって完成させた納骨堂のドキュメンタリー的作品。

感想:人骨で作る十字架やシャンデリアの装飾は地獄を感じさせる不気味さであるが、どこか造形美のような風合いも感じさせる不思議な空間。さび付いた自転車の金属音が、骨の乾燥した音のように同調する。一度行ってみたいな。

『エトセトラ』(66年/7分)カラー
解説:版画のような単純なキャラクターが織り成す三つの世界。第一話『翼』、第二話『鞭』、第三話『家』の三話構成。

感想:昔のゲーム音のような音楽が印象的。全ては繰り返される反復の世界。

『アッシャー家の崩壊』(80年/16分)モノクロ
解説:数週間の予定で精神を病んだ友人の家に同居することになった主人公。その家には妹がいたが、病死してしまう。妹が死んだことでさらに精神を病んだ友人は、嵐の夜に妹は生きていると豪語するのだった。陰気で暗い館、沼地、木の根、粘土や椅子で表現される精神状態の描写。人物はまったく登場せず、ナレーションによって物語りは進む。

感想:暗くて曇ったような粒子の粗い白黒映像で、陰気な館の映像はどこか引き込まれる。あの曇っていて多湿な風合いが、沼地のすぐそばにある館の印象をさらに際立たせている。雨の夜にみたら、さらに陰気な気分になるだろうな。

『レオナルドの日記』(72年/12分)カラー
解説:ダ・ヴィンチのデッサンが動き出し、ニュースフィルムと一緒にコラージュされる。

感想:物語などないけど、どこか関連があるようにデッサンが動き出す。ダ・ビンチのデッサンをアニメーションさせるだけの描写力があるのがすごい。

ドン・ファン』(70年/33分)カラー
解説:自分の私利私欲の為に生きる放浪息子ドン・ファンには、許婚の相手、ドナ・マリエがいたが、実の弟であるフィリップに奪われてしまう。怒ったドン・ファンは気に入らぬ相手を全て殺してしまうのだが…。

感想:どこか滑稽な操り人形が、舞台を飛び出して外に飛び出す。人形だとは思っていてもあの硬そうな木彫りの胴体や顔から血が噴出して、そこがリアルで怖い。サーカスのピエロやオルゴールにあるような、おどけた音楽がじつに奇妙な空間を出している。

彼の作品には、ほとんどシナリオなんてないと思う。全てはこういう映像を流してどう感じるのか?というトリックがなされているような気がする。この人はほんとにすごいよ。チェコには一度行ってみたいな。