『三文役者』(00年・近代映画協会)

「脇役が~おらんかったら~主演俳優は~なにもできまへんのや~。」

三文役者 特別編

三文役者 特別編

内容(「Oricon」データベースより)

戦後の日本映画の貴重なバイプレーヤーで、自らを“三文役者”と呼んだ役者・殿山泰司の半生を描いた、新藤兼人監督が贈る名作ドラマ。

最近なにかと新藤兼人ですね。監督曰く、「映画は集団意識によって描かれる。」んだそうだ。年初めからなんだかすごいラインナップになりそう。

まず殿山泰司という人は自らを、三文(つまらない、値打ちのない)役者と称して、数々の映画に出演。その演技とはバイタリティーにあふれ、数々の名演を披露した。だが私生活では酒に女に癖が悪く、そのだらしなさには、本人さえ苦闘するが、役者魂があった。滑稽で悲しくて、そこが人間味あふれる殿山泰司「タイちゃん」だった。

その殿山泰司という人をこよなく愛し、監督作品にはかならず出演させていた新藤兼人が、彼への最大のオマージュとして描き上げた。

作品は冒頭から彼の出生紹介から始まる。構成としては変わっていて、時たま実際に彼の俳優仲間であった「おとじ」(乙羽信子の愛称。当時そう言われていたようだ。)がコメンテーターとして登場。殿山を演じる竹中直人に直接、合いの手のように会話するという不思議な形。そして劇中、彼の出演作品のシーンを挿入し、当時の彼の姿を強く印象付けている。映画の裏話、実際交友のあった役者を起用し、対話させるがドキュメンタリーなのか劇映画なのか、「実際の話」感覚がする映画だ。

新藤兼人らしい男女の性の大らかな表現がここでも出てくる。荻野目慶子が演じる側近の妻(殿山は籍も入れた内縁の妻もいたが、年の離れた若い妻と生活していた。)のヘアーまで見せるその大胆さ。あっけらかんとしている。

タイちゃんが生きた時代が時代なだけに、忠実な時代設定を描いているではなし。街中のシーンでは適当に現代の街並みで撮影している。「監督の背中にゲロ吐いてしもた~。」なんて自分の失態に泣き叫ぶ彼の人生、見ていて笑ってしまう。タイちゃんがもっとも恐れ、もっとも尊敬していたのは監督だった。

DVDでは公開時、モントリオール国際映画祭に招待された孫が新藤兼人をつれてカナダへ行く15分程度のドキュメンタリーが入っていた。