『市川崑物語』(07年)監督:岩井俊二

日本映画の一観客として、

どの監督の映画をいちばん多く見ているのか、と訊かれたら、

私は躊躇なく、市川崑氏の作品と答える。               三島由紀夫

市川崑物語

市川崑物語

内容(「Oricon」データベースより)
鬼才・岩井俊二が日本映画界の巨匠・市川崑の幼少期から太平洋戦争を経て、現在に至るまでの物語を描いたドキュメンタリー!岩井俊二が、彼ならではの視点で市川崑の軌跡を辿り、尊敬と憧れの念を込めた作品へと完成させた傑作。これまであまり語られることのなかったアニメーター時代などが描かれているのは貴重。中でも生涯の伴侶であり、シナリオライターとして名コンビを組んだ和田夏十とのシーンは必見!

そういえば今週は二つとも2000年代で、映画人へのオマージュ的作品を観てますね。しかも市川崑新藤兼人という二大大御所。

市川崑の作品は僕も好きだ。やっぱり「金田一耕輔シリーズ」がすごいと思うが、それは公開当時、映画少年だった岩井俊二もその一人だった。

映画はノーナレーションでタイトルクレジットの文字を見て進行するという変わったスタイル。そこがなんだかな~とちょっと変に思ってしまう。悪く言うとネットのFlashムービーでも似たようなことをしているわけだし、タイトルクレジットは物を伝えるにはストレートだけど、見る側にとしては道路標識のような「提示を受ける」みたいな感覚がして、声によるメッセージが耳から入らない分、頭に響かない。BGMは効果的に使っているのが岩井流だなと思う。映画館で見ようとは思わないなあ。めったやたらと市川崑の作品のシーンが挿入されるけど、それはテレビのドキュメンタリーでもやってるわけだし。タイトルクレジットだけなら簡単に作れるぞ。

前の『三文役者』を観た後では、アプローチが簡単すぎるぞ。と思ったのと同時に公開は昨年なので、『犬神家の一族』のPRも強く感じる。市川崑のファンならリメイクには驚きと期待があるだろう。岩井俊二もそのファンの一人ということなのか。