『世界最速のインディアン』(05年・ニュージーランド、米)

「こういうマシンでスピードに挑む時は一生が5分に勝る。一生よりも充実した5分だ。」 「夢を追わない人間は野菜と同じだ。」「どんな野菜?」「…キャベツだ。」
1967年、ニュージーランドの田舎町で朝早くから爆音を鳴らす厄介者の老人、バート・マンローは1920年型インディアン・スカウト(オートバイ、Ⅴ型2気筒600cc)を自ら改造し、流線形のボディからエンジンのボアアップの為ピストンまで自作、海岸線で陸上最高速のテスト走行を繰り返していた。一見変り者の彼だが地元の理解者の寄付や自分の年金を利用してアメリカ・ユタ州ボンネビルでひらかれている陸上走行最速を決めるレースに参加する為、渡米する。25年来の彼の夢がその大会に出て記録を破ることだった。 ここ最近のベスト映画!この感動は素晴らしい! 世の中には趣味に走ってまわりに迷惑をかける人がいる、でもこのおじいさんの素晴らしさは周りの理解者が彼という人物をよく知り、時にはそっとしておいたことなのだ。彼もまた自分の趣味を隠さなかったことだろうか。彼の家はまさに趣味にしか行き届いていない家で庭は草で茫々、家は車庫のような粗末なもので隣人からは「土地代が下がる。」とまで言われていた。一般常識がなく、隣人からはトラブルになりやすかった。アメリカ行きを公然とした時は、煙たがれていた隣人からも励ましの言葉を受けて旅立つ。 アメリカに着いてからも多難のボンネビル行きは様々な人に出会っては率直に接し、困った時は少々横柄でも自分のことは何もかも話した。 そして念願のボンビルに立った時新たな問題に直面する。 この夢を追いかけ続けるお爺さんになんと励まされることか。ボンネビルとはアメリカ・ユタ州にある巨大な塩湖が干上がった場所で、とにかく平らで広く、走行条件がよいのでモータースポーツのスピード競技が開催されている場所だ。このお爺さんの車関係の知識の豊富さもまた好印象を与えていたのだろう。年も違えば性別も人種も違う人たちに出会いながらボンネビルに向かうロードムービーのよさも味わえる。 何もかも自分流にカスタムされたマシンにレースの審査員は嘲笑するのだが、その彼の出した記録1000cc以下二輪の記録は今も破られていない。1926年に買ったマンローのインディアン・スカウトは600cc最高速89km/hだったのをボア・アップして950cc最高速305km/hを叩きだした。非公式記録には331km/hを出している。