心臓の弱い方…『恐怖劇場アンバランス Vol.2』

「あなただって人を殺そうと思ったことが、あるはずです。」  第2話『殺しのゲーム』
「こ~の目玉は~天使の~目玉に~違いない~違いない…。」第3話『仮面の墓場』 

DVD恐怖劇場アンバランス Vol.2

DVD恐怖劇場アンバランス Vol.2

内容紹介

心臓の弱い方、お一人でご覧になる方は、この「恐怖劇場アンバランス」はご遠慮下さい…。円谷英二、監修―。昭和ホラーが蠢く。 ―“恐怖劇場アンバランス”とは?!― 『怪奇大作戦』後、円谷プロが大人に向けて“真の恐怖”を描いた『恐怖劇場アンバランス('69年制作)』。一度はお蔵入りとなり、制作完了から放映まで実に3年もの年月を要した伝説の作品である(放送は'73年)。不条理、怨念、転生、呪い…男と女。人間が持つリアルな恐怖の数々を西村京太郎、松本清張鈴木清順藤田敏八ら一流作家競作、渡辺美佐子蜷川幸雄花柳幻舟ら異色キャストで贈るオムニバスホラーの金字塔。音楽:冨田勲

第3話「殺しのゲーム」 原作:西村京太郎/脚本:若槻文三/監督:長谷部安春/出演:岡田英次春川ますみ田中春男石橋蓮司ほか
第4話「仮面の墓場」 脚本:市川森一/監督:山際永三/出演:唐十郎緑魔子、早川保、小野千春ほか

このシリーズはなんだか依存症のような、後を引く面白さ。TVシリーズと高をくくっちゃだめだよ。怖くて面白い作品なんだって。 一話50分少々の作品ながら色んな要素を組んでるんだって。猫ににらまれたら最後、心臓の弱い方は観るのをやめて、一人で見る方は一人で観て!

『殺しのゲーム』

末期の胃癌だと告げられた中年サラリーマンの前に、謎の男が近づく。男は「自分は末期の肺癌でもう余命行く場もない。二人とも余命行く場もない者同士、財産を掛けて、殺しのゲームをしようじゃないか。」と持ちかける。かたくなにゲームの参加を拒み続ける胃癌の男に、肺癌の男は殺人を実行しようとする。

「誰にも殺そうと思った人間はいるはずだ。殺せないのは警察につかまる恐怖があるからだ。癌の進行の恐怖も、このゲームをしている間は忘れられる。余命行く場もない私たちは、このゲームをやっている間は救われるのです。」

実際にあるかもしれない物語。ホラーというよりはサスペンスが強い。「癌で死ぬ運命にある。」という根本から「何をやっても構わないじゃないか。どうせ二人は死ぬんだから。」という理屈に繋がる道理。死の運命からは抜け出せられない。ただ死ぬまでの間にやっておこうという思想から、生死をかけた殺人ゲームの幕が切って落とされる。心理サスペンスとしても、なかなか見ごたえがある。これは映画化の前に、尺が足んないからTVシリーズでやってみようという関係からこうなったんじゃないかな。どちらにせよ短編で十分の作品だと思う。

『仮面の墓場』

5人の小さな劇団が、古びた映画館で自主公演の準備をしていたが、一人が事故で転落死してしまう。警察沙汰になることを恐れた劇団員は、死体を地下の焼却炉で始末してしまおうと火に掛けるが、中から死んだはずの団員の叫び声が聞こえた。その後も死んだ団員を見たという証言や、団員たちの不和が元で公演もままならなくなるのだが、事態は思わぬ方向へ…。

これは怖い!『金田一少年の事件簿』にあるかのような劇団員たちのドロドロとした思惑、死んだはずの男が現れるという恐怖、監督の鬼気迫る公演への憧れ、ラストに繋がる演劇賛美。ホラーの要素と演劇を賞賛するイメージ映像まで加えた面白い作品だ。これは演劇の舞台裏を描いた作品だが、実は作品自体が劇のようになっていたという意味合いもあるのだろう。ラストは観て驚くよ。